ポイント

  1. 収入が多い人の介護保険料が高くなる制度の導入
  2. 段階的な導入で2020年までに徐々に保険料を増減
  3. 介護保険の財政問題が解決するわけではない

財務省、厚生労働省は介護保険の第2号被保険者(40歳から64歳の医療保険加入者)に対して、介護保険料の徴収額を収入に応じて上下させる仕組みを2017年8月から段階的に導入することになりました。
所得水準が低い会社員の保険料負担を減らすことが狙いです。

現在の介護保険料の仕組みにどんな問題があるのか。
また、この仕組みが導入されることで懸念されることはないのかについてまとめました。

現在は加入している健康保険の加入者数で保険料が決まっている

介護業界は介護保険ありきで成り立っています。
要介護者が介護サービスを利用する際、自己負担額以外の8割~9割を国と自治体、介護保険が負担することになっているからです。

介護保険は原則として40歳以上で日本に在住している人かつ、医療保険に加入している人であれば全員が加入する保険のこと。
加入者のうち40歳から64歳までを第2号被保険者、65歳以上を第1号被保険者と呼びます。

今回の制度改定に関わってくるのは第2号被保険者です。

現在、第2号被保険者の介護保険料は、所属する健康保険組合の規模によって徴収額が決められており、収入が多くとも健康保険組合の規模が小さければ保険料も安く、収入が少なくとも大人数が所属する健康保険組合であれば保険料が高くなるという性質を持っています。

収入が少ない人の方が収入が多い人よりも介護保険料が高額になる可能性があるというのが問題です。

段階的に導入する「総報酬割」とは

今回、段階的に導入する予定となっているのが「総報酬割」というもの。
加入している健康保険組合の加入者数ではなく、加入する健康保険組合の総報酬に応じて保険料が算出されることになります。

たとえば同じ加入者数の健康保険A社とB社があったとして、A社の総報酬額が5億円、B社が10億円だった場合には、B社が負担する介護保険料はA社の倍になるということ。
つまりA社に加入しているサラリーマンの介護保険料負担が増えるということです。

一般的に考えれば収入が多い人が多くの保険料を負担すべきとなるかもしれませんが、当人たちにしてみれば面白い話ではありません。
場合によっては一カ月当たりで5,000円程度の負担増となることも考えられるからです。

段階的に導入する背景

急な介護保険料の負担増は過去の例から見ても必ずといってよいほど不満に繋がります。

また、不満があがるだけではなく、介護保険は給与からの天引きとなっている関係上、実際の手取りが下がってしまうことから、保険料の負担額が増えた層の消費が落ち込むことが懸念されています。

消費が落ち込めば経済活動に影響が出てきますので、結果として介護保険を取り巻く環境が悪化することにも繋がってきます。

政府が段階的な導入を行う背景には、こういったことを防ごうとする狙いがあるわけです。

そのため政府は、導入初年度である2017年には総額の3分の1だけにとどめ、残りの3分の2は2018年~2020年に上乗せしていく方針。 
また、導入する当初4年間に関しては中小健康保険の負担が増えないように国が財政支援を行うことになっています。

介護保険の財政問題が解決するわけではない

今回の制度が導入されれば、総じて所得水準が低い健康保険に加入している人からすると、介護保険の負担額が下がるので生活が少しだけ楽になることが考えられます。

ただし、今回の制度で介護保険の負担額が下がった人も、手放しで喜んでよいものかどうかは難しいところではないでしょうか。

高齢者が増え続けている今、介護サービスを利用する要介護者も年々増えており、介護保険の財政破たんも視野にいれなければなりません。
政府としてはなんとか介護保険の支出を抑え、収入を増やさなければならないという課題が残っています。
介護保険を負担させる割合を変えただけでは全体的な増収には繋がらないからです。

一旦は中小、零細健康保険に加入する被保険者の介護保険料負担が減ることに繋がったとしても、全体的な保険料の増額は避けられない事態になると言えるでしょう。
今回の制度導入はこうした大きな負担増を目立たせなくさせるためのものかもしれません。