
- 政府は介護サービスの縮小を検討している
- 介護サービスが縮小されると積極的に介護サービスを受けないという人が増える
- 介護サービスを受けなければ要介護度をあげることに繋がりかねず、結果的に財源を圧迫する
厚生労働省が介護保険制度見直しの一環として、サービスの縮小や自己負担額を増やすことを検討しているという問題があります。
これは介護保険制度の財源に対して請求される保険金額が増え続けていることに対処するための施策で、すでに要支援の方への介護サービスのうちいくつかは介護保険制度から地方自治体の事業として段階的に移されています。
現在は介護度が比較的軽度である要介護度1、2の方へ向けた車いすなどの福祉用具レンタル料支援サービスも縮小する方向で話し合いが行われており、年内までに方針を決定し2018年の改正案には盛り込まれる予定となっています。
また、訪問介護における生活援助も将来的には介護保険制度から外されることが懸念されているため、現時点でもサービスとしての割合は少なくなっています。
こういった軽度の方への介護サービスを縮小することは果たして財源を増やすことに繋がっていくのでしょうか。
要支援者は要介護者の予備軍となりかねない
たとえば要支援者への予防介護サービスを縮小させた場合、考えられることはサービスへの垣根があがってしまい気軽に予防介護サービスを受けなくなるということです。
現時点では介護保険制度の枠の中にあり利用者の1割負担で済むサービスが、もしも全額自己負担になるようなことがあればそれまでの10倍は費用がかかることになります。
単純に考えても利用頻度は1/10以下に落ち込むことが予想されます。
これは極端な例ですが、介護サービスの縮小は要介護者や要支援者から介護サービスを遠ざけることに繋がるということです。
もし要支援状態にある方が予防介護サービスの利用を控えてしまったらどうなるでしょうか。
本来なら早くに社会復帰できたかもしれない方でも、症状悪化に繋がるかもしれません。
場合によっては要支援から要介護へと状態が変化するかもしれないわけです。
これは何も要支援から要介護になるという話だけではなく、たとえば軽度な介護状態の方が重度介護状態になるきっかけを作ることにもなりかねません。
そうなれば当然介護保険の給付金額が増大することになり、結局は財源を圧迫することに繋がってくることになります。
国民や事業者だけでなく、利用者にまで負担が強いられる時代
介護保険の財源問題は今にはじまったことではなく、昨今の消費増税において国民にもその負担が強いられていますし、介護報酬の縮小によって介護サービス事業者も苦しい思いをさせられているという現状があります。
また、介護保険の加入年齢を引き下げる案が検討されているなど、若年層も負担しなければならないような時代になりつつあります。
そのうえで介護サービスの縮小となれば、介護サービス利用者にも負担が強いられる事を意味しています。
制度と財源の問題をしりぬぐいするのは果たして国民、とくに利用者であるべきなのでしょうか。
財源の問題は徐々に先延ばしにしていくことで解決する問題ではありません。
数十年後には要介護者の数は激減することがわかっていますが、その時には国民の数も激減しています。
どこかで歯止めを効かせなければならないことは確かです。
高齢者が生きづらい時代は介護離職ゼロを目指せるのか
介護サービスの縮小のみならず、医療費負担が引き上げられるなどますます高齢者が生きづらい国になりつつある日本。
予防サービスを含めて、「要介護者を減らす」「要介護度を下げる」ということに着目したサービスが縮小されてしまうことは、結果的に政府が掲げる「介護離職ゼロ」とは反することとなりかねません。
介護離職が進めば国民総生産が下がることも懸念されており、国としてマイナスの方向へ動いていってしまうことは目に見えています。
小手先の財源確保に留まらず、将来を見据えた介護業界の改善が望まれます。