ポイント

  1. 職員の給与アップを目的に介護報酬が引き上げられる
  2. 賃金水準が低いことは離職理由の上位にある
  3. 賃金アップが人材不足が解消に繋がるかは難しいところ

2017年1月18日の社会保障審議会にて、介護職員の給与アップを目的とした介護報酬引き上げが2017年4月以降に行われる方針であることが明らかになりました。
介護業界は深刻な人材不足にあることは周知の事実であり、今回の介護報酬引き上げ案が人材獲得に向けた一手になるか期待が高まります。

賃金水準を理由に仕事を辞めたいと考える介護職員

介護業界の人材不足は、新たに同業界で働きたいという人が少ないことだけでなく、現在業界で働いている人が辞めてしまうことも原因となっています。
実際に介護業界全体で見ても賃金水準が低いことを理由に転職したいと思う人が少なくなく、常勤職員の離職理由では上位に挙げられています。

仕事の良し悪しは賃金だけで決まるものではありませんが、高齢の利用者に接することで自身の未来を想像しやすい仕事であると考えれば、賃金が低いことから将来に不安を感じることは他の職業に比べて大きいのかもしれません。

また、過酷な職場環境に対しての対価が低いと感じている方も多く、賃金アップは人材不足を解消するために避けてとおることができない課題だと言えるでしょう。

特定の条件をクリアした事業所の介護報酬引き上げ

第135回社会保障審議会介護給付費分科会では、介護職員の給与を1万円アップすることを目的に、特定の条件をクリアした事業所については介護報酬を4月以降にアップさせるという方針が明らかになりました。

介護業界の賃金水準は全産業平均よりも月給ベースで10万円程度低いという事実もあり、圧倒的な低賃金が人材不足を後押ししていることは否めません。
2015年11月時点での有効求人倍率は3.4倍を記録しています。
つまり求職者1人に対して3.4カ所の求人があるという状況で、求職者にとっての買い手市場であることがわかります。
これは2000年の介護保険制度スタート以降最も高い数値であり、人材不足がいかに深刻化しているかを示しています。

求職者からすれば、より高額な賃金を提示してくれる職場を選びやすい状況になっているものの、介護サービス事業は介護報酬によって成り立っている関係上、事業所が提示できる金額にも限度があります。
そのため、賃金アップには今回のような介護報酬引き上げが不可欠と言えるわけです。

介護報酬引き上げ、賃金アップの問題点

今回の介護報酬引き上げから人材流出を防ぐ可能性が期待できる反面、新たな問題も考えられます。

介護報酬は既知の通りそのほとんどが介護保険から捻出されるものです。
つまり財源には限りがあることを意味します。

介護報酬が引き上げになる事業所が増えれば増えるほど、介護保険の財源が圧迫されることが考えられます。
財源確保のためには介護保険料を引き上げなければなりません。

また現在1割負担が基本となっている利用者の自己負担額も、高所得者の場合には2割負担から3割負担に引き上げられる事が決まったのも記憶に新しいと思います。
介護職員の賃金をアップさせるということは、介護に関わる多方面にも影響があるということです。

賃金アップは人材流出の歯止めとなるのか

現在の賃金水準に不満がある離職者たちが、はたして1万円の賃金アップ程度で思いとどまるものなのかどうかには疑問が残ります。

介護保険の仕組みを考えても、条件をクリアした事業所へ一律介護報酬をアップさせるというのはとても難しいことなのはわかります。
それでも現状の賃金水準が平均値より10万円近くも下回っていることを考えると、賃金が多少アップするぐらいでは人材流出の歯止めとはならないのではないでしょうか。

介護職は超高齢社会を迎える日本において欠かす事のできない職業です。
そうはいっても自由競争ができない以上は一般産業に比べて高い利益を出していくのは難しく、賃金の水準が低くなってしまうということは避けられない問題であると考えられます。

賃金アップ以外での人材流出阻止、人材獲得が課題と言えそうです。