ポイント

  1. ハイテク機器や機能訓練でインセンティブ付与の方向へ
  2. 効果の実証がないうちから報酬の話をすることへ疑問視する声も
  3. 事業者にかかる負担が大きく、一筋縄ではいかない

2017年は団塊世代が70歳になる年として、介護業界を賑わせています。
70歳を過ぎると統計的に要介護となる確率があがることからも、ますます介護人材不足が危ぶまれます。

政府としては人材不足の解消に向けてさまざまな取り組みに対してのインセンティブ付与(またはディスインセンティブ)を考案していますが、果たしてこうしたインセンティブによる取り組み支援が介護業界を支えることに繋がるのでしょうか。

ハイテク機器や介護予防へのインセンティブ

最近挙げられているのは介護ロボットや見守りセンサーの導入促進としてのインセンティブ、またはリハビリなど機能訓練に対してのインセンティブです。

介護ロボットが導入されることで職員の負担は減るため、人材不足への対応には一定の効果が見込めるかもしれません。
たとえば排せつタイミングをタブレット端末に知らせてくれる機器を導入することで介護者の負担は圧倒的に減る事が予想されます。
また、介護施設向けにAIであるPepperをカスタマイズして導入実験している例もあり、今後の介護の現場においてハイテク機器が活用されていくことは必然と言えるでしょう。

機能訓練に関しても、要介護度を下げることが目的とされており、一般的に要介護度が下がれば職員の負担も下がることからインセンティブを付与してでも促進したいというのは当然の流れであるといえます。

事業所にしてみたら死活問題

問題はディスインセンティブも考慮しなければならない点にあります。
政府としては「機能訓練が行われていない」とされる事業所に対しては介護報酬を下げる可能性も示唆しています。

2016年は過去最大に介護事業所が閉鎖した年でした。
それというのも介護報酬の見直しによって窮地に立たされた(または今後窮地に立たされる)事業所が多かったことが原因です。

事業所としてはただでさえ年々減少されている介護報酬をさらにディスインセンティブされてしまうことは死活問題です。

介護業界以外にも収入源がある場合には撤退も視野に入れられるかもしれませんが、介護業界で生き続けたい事業所としてはどうにかしてインセンティブを得る方向にもっていきたいはずです。

報酬を得ることが目的になっては本末転倒

ただし、インセンティブを得ることが目的となっては本末転倒です。
そもそも介護というのは利用者の尊厳を守ることがベースであり、お金儲けの道具ではありません。

利用者にとってはリハビリが行われて機能回復することだけが喜びではありませんし、ハイテク機器の導入によって人と触れ合う時間が少しでも減ってしまうことが悪影響を及ぼさないとも限らないわけです。

事実、こうした方針に対しては「効果が見えないうちからインセンティブの話になるのはどうか」とする声も上がっており、難しい問題となっています。

事業者にかかる負担は大きい

介護自体はお金儲けの道具ではありませんが、介護サービスは利益を上げて運営していかなければならない事業の一環です。
介護業界で働く人も、事業所が介護報酬を得られなければ適正な給与を得ることはできません。

人材不足が深刻な問題であることから介護業界の賃金アップが望まれていますが、そもそも事業所の利益が上がらなければ賃金アップしたくともできないわけです。

事業者には職員の待遇改善をするためにより多くの介護報酬を得なければならないという課題がある反面、利用者の尊厳を守ることも課されているなど、多くの負担がのしかかっている状態です。

未だに介護報酬の不正受給で摘発される事業所も多いですが、こういった経営の難しさから起こるべくして起こった違反なのではないかとも考え去られます。

ハイテク機器や機能訓練によるインセンティブ付与は人材不足に対しての打開策となるのかもしれませんが、インセンティブ導入だけでは解決しない問題もまだまだ残っていると言えるでしょう。