ポイント

  1. 参入企業も増えているが、倒産数も増えている介護施設
  2. 介護報酬の見直しや、報酬請求へのハードルがネック
  3. 我々国民がまずは介護を知る必要がある

福岡県の社会福祉施設において、徘徊癖のあった認知症の利用者が施設を抜け出してそのまま死亡した事件について、先週福岡地裁にて判決が出ました。
裁判所は施設に対し、遺族への3,000万円弱の支払いを命じたとのことです。
徘徊し女性死亡 通所先施設に賠償命令 福岡地裁

当該施設での実態がどのようなものだったのかはわかりませんので憶測でしか物を言えませんが、介護業界に携わる方にはとても考えさせられる事件だったのではないかと思います。

当然遺族には落ち度はありませんし、裁判所が指摘する「施設職員は女性に徘徊癖があることを認識しており、見守る義務があるのに違反した。施設は職員を指導監督するべきだった」というのも、その通りだと思います。

ただ、周知のとおり、介護福祉施設の経営は並大抵の苦労ではできません。
年々介護報酬の引き下げは行われていますし、参入する企業が多い反面、倒産に追い込まれている施設も年々増えているのが現実です。

実際に女性が施設を抜け出した背景はわかりませんが、経営をギリギリでやられている施設の方にしてみたら他人事ではなかったのではないでしょうか。

なぜ介護施設は儲からないのか

介護ビジネスは、今後超高齢化社会を迎える日本において、切っても切り離せない産業になっています。
サービス利用者である高齢者が多く、さらに今後も増え続けることを考えると、一見誰でも稼げそうな安易なビジネスと思えるかもしれません。

ですが、介護ビジネスの収益の源泉となっているものは主に「介護保険」です。
利用者の要介護度に基づき、介護保険で定められた介護報酬を請求することで施設の利益を確保できるわけです。

そもそも介護報酬を請求できるのは厳しい条件(人員の設置など)をクリアしている施設のみ。
そこへきて3年に1度改訂される介護報酬も毎回下がっていることは、介護施設の運営を圧迫していることは言うまでもありません。

かと言って人員の基準を下げるようなことになれば、今回のような事件も余計に起きやすくなるでしょうし、介護報酬をあげるためには現在40歳以上の方が支払っている介護保険料を引き上げるか、支払年齢を引き下げるなどして財源を確保する必要がでてきます。

さまざまな理由から、介護ビジネスは儲けを出すのが難しいように出来ているわけです。

国民全体の意識が変わる必要性

他にも「老人介護をお金を稼ぐために利用するなんて!」と言った声があるのも事実です。
介護に携わっている人なら、そういった考えがいかに間違っているかはわかると思いますが、介護業界のことを知らない人にしてみたら仕方がない考え方かもしれません。

昔は老人介護といえば、家族でするのが普通でした。
でも、今は時代が違います。

家族の中で、働ける人は仕事に出て、社会を回さなければなりません。
日本という国を、仕事から支えるということです。

そして、そのためには介助が必要である家族は介護を仕事にしている人に任せて、自分は自分にしかできない仕事をするという図式が必要となってくるわけです。

この図式を完成させるためには、儲かる介護施設が不可欠です。
介護施設に潤沢にお金が入り、介護職員の待遇が向上することで質の高い職員が集まり、利用者の家族も安心して預けることができるようになるからです。

まずは国民全体の、介護への意識が変わることが必要なのかもしれません。

安易に儲けさせていいのかは疑問

とはいえ、介護が必要な老人の尊厳を守るため、高い志で経営されている介護福祉施設がある一方で、「儲け」にのみ着目した質の低い施設があるのも現状です。
介護報酬を荒稼ぎ!「ブラック介護事業者」の実態

「介護を食い物にした不正」は介護保険制度が導入された直後から現在まで後を絶ちません。

こういった背景からは、「介護施設を安易に儲けさせてはいけない」と思わせられることもあります。
今回の事件における福祉施設での実態はわかりませんが、まともに取り組んでいる会社こそ恩恵を受けられるような仕組みづくりが望まれます。