ポイント

  1. 要介護度が低い利用者への生活援助サービスの介護報酬引き下げを検討
  2. 生活援助は決して軽視してよい介護ではない
  3. 事業所の負担が増えることは介護離職に繋がる危険性も

「厚生労働省が2016年10月12日に要介護1および2の利用者へ生活援助を行う事業所への介護報酬引き下げを検討する案を審議会に提示する見通し」というニュースがありました。

既に要支援者に対しての生活援助は事業者への介護報酬が引き下げられている現状があります。

生活援助とは調理や配膳、洗濯に掃除、買い物といった生活の基本的な部分を助けるサービスです。
たしかに一般的な身体介護に比べると軽視されそうな内容に思えるかもしれません。

ただ、身体介護のような直接的な介護だけに着目せず、生活援助のような間接的ともとれる介護をしっかりと行っていくことは、要介護状態の悪化を食い止め、結果的に財源を守ることにも繋がってくるという理解が必要です。

生活援助も立派な介護のひとつの形

介護とは、決して身体介助を行うことだけではありません。

ある生活援助サービスの利用者は、ヘルパーが来ない日の食事はレトルトで済ませているといいます。
高齢で一人暮らし、生活には介助を有する人がレトルト食品を一人寂しく食べている姿を想像すれば、生活援助サービスの重要性が見えてきます。

食事、とくに人との会話の中にある食事は人生における喜びの一つでもあります。
誰かと触れ合うことで、今日もまた頑張ろうと思えるものです。

もし生活援助の報酬が減るようなことがあれば、利用者の負担が増えて利用できる回数が減るか、事業所の負担が増えてサービスを打ち切られることになりかねません。
そうなれば一番の実害を被るのは利用者です。

生活援助によってヘルパーと触れ合う事ができ、介護状態の回復ができれば、要介護度を下げることにも繋がります。
要介護度が下がることで生活援助がまともに受けられなくなり、状態悪化につながる可能性も否定できません。

利益のでない介護事業を行う事業者はいない

既に自治体によっては要支援者への生活援助サービスに対して介護報酬を引き下げているところもあります。
事業者からすれば一方的な決定であり、介護事業として利益をだしていかなければならない以上はサービス導入を見送ることも運営上致し方ないことと言えるでしょう。

現に生活援助への介護報酬が引き下げられた自治体では従来の20%前後しか事業所が参入しないという事態がおきており、サービスを必要とする利用者が置き去りにされている状態です。

前述のとおり、生活援助と言っても軽視できるような介護サービスではありません。
これが打ち切られることで介護状態が悪化する利用者が増えれば、その分介護保険の財源を圧迫することにも繋がるわけです。

事業者への負担は介護離職へ繋がる危険性も

介護保険の財源が不足し、このままでは保険制度自体が継続できなくなる問題は周知の事実です。
そのため要介護度が低い利用者向けサービスの報酬を引き下げてでも財源を確保しなければならない状態にあります。

当然のことながら介護報酬が引き下げられてしまえば事業所に残る利益は少なくなります。
制度改定ごとに減らされる介護報酬に対して、最低賃金の引き上げなど、財源問題の負担の多くは事業者にのしかかってきています。

介護保険自体の破たんを避けるために行われる介護報酬の引き下げですが、その前に事業所が存続できなくなる可能性も考えなければなりません。
事業所がなくなってしまえば、そこで働いていた職員は最低賃金どころの話ではなくなるためです。

未来を見据えた法改正を

安倍政権では「介護離職ゼロ」を目指した新・第三の矢「安心につながる社会保障」を緊急に実施すべき対策として、介護を取り巻く業界状況が重要であると考えています。

一方、実際の現場において重要とされていることと行政の考えとが必ずしも一致するとは限りません。

目先の介護報酬削減によってただちに事業所が廃業に追い込まれるということはありませんが、こういった流れが続いている状態から考えられる未来を見据えて、行政には画一的でない法改正を期待せずにはいられません。