ポイント

  1. 厚生労働省は要介護度が改善した自治体への財政支援を提案
  2. ケアプランの作成費用の自己負担化も議論
  3. 介護離職ゼロから遠のく可能性も

2016年9月23日の社会保障審議会介護保険部会において、厚生労働省は「要介護度が改善した自治体への財政支援」を提案しました。
また、「ケアプランの作成費用を自己負担化する」という件についての議論が交わされています。

2018年度の介護保険改訂時に盛り込まれる内容となってくるもので、いずれも介護報酬の抑制を狙った政策と考えられますが、なかなか一筋縄ではいかない問題だったりします。

このままでは間違いなく破たんする介護保険

2000年の介護保険制度導入時に比べて、現時点での要介護認定者数は膨大な数になっています。
この原因には少子高齢化社会が急速にやってきていることがあげられ、当時設定した財源だけでは成り立たなくなるのは当然の流れと言えます。

政府は介護保険の加入年齢の引き下げを検討することや、実際に介護報酬を引き下げることでなんとか財源確保を狙っていますが、なかなか難しいというのが現状です。

要介護状態で介護サービスを利用する方が増えれば、介護保険からの介護報酬の支払いも増えることになります。
財源は無限にあるわけではありませんので、介護報酬の支払いだけが増え続ければ破たんするのは目に見えています。

だから自立支援に力を入れる

そういった背景からか、今の介護業界においては「自立支援」がキーとなっています。
リハビリテーションを重要視し、要介護度を引き下げられる・・・つまり自立した生活が送れるようになる人を増やす方向にして、介護報酬の支出を防ごうというわけです。

一見すると介護利用者本人においても、自分の力で何でもできるようになるのは嬉しいことですし、要介護度が下がれば介護報酬も下がり、介護保険の財源も安泰になっていくように思える素晴らしい話です。

そのため、「要介護度が改善した自治体への財政支援」というのはよい方向へ向かいそうだと思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、そう簡単な話ではないのではないかとも思えます。

自治体の財政支援が事業者の報酬を削減しかねない

懸念されている事案の1つに「自治体が要介護度を軽視しかねない」というものがあります。

要介護度認定は利用者や家族が市区町村の自治体を訪れ、認定員が調査をし、医師の判断などを仰いだうえで、自治体が決定するものです。

そして介護報酬というのは、実際に要介護認定を受けている方が介護サービスを利用した際に、そのサービス事業者に支払われるものです。

また、介護利用者が介護サービスを受けた際の費用負担のうち半分は自治体が請け負っています。

要介護度が高ければ高いほど、事業者が受け取れる介護報酬は多くなりますが、自治体の負担も大きくなる。
反面、要介護度が低くなれば事業者が受け取れる報酬が減る代わりに、自治体は負担が減り、財政支援も受けられるようになるというわけです。

こういったことから端的に考えた時、財政状況がよくない自治体であれば、財政支援を目的として要介護度認定を軽視しかねないと懸念されることに繋がってきます。

ケアプラン作成の自己負担も同様

ケアプラン作成の費用負担に関しても、同様の問題が起きかねません。

ケアプランの作成は現状は利用者自己負担がありません。
つまり、要介護認定を受けた方なら誰でもケアマネジャーに相談のうえ、適切なケアプランを作成してもらうことが可能です。

ただしこのケアプラン作成のほか、ケアマネジャーの仕事にも介護保険からの報酬が支払われていることは言うまでもありません。
そのため、全額自己負担にする、または1割負担にする、ケアマネジャーが行っている仕事を利用者本人が行うなどで介護報酬の支出を抑えようというのが狙いのようです。
※また、受け身でケアプランを作らないよう、お金を払わせることで「自分ごと」にさせるのも狙いだとか。

もし全額自己負担となってしまった際には、ケアマネジャーの利用が抑制され、適切なケアプランが作られず、介護サービスの利用も控えられる結果に成りかねません。

介護報酬の抑制は介護離職ゼロから遠のく可能性がある

このように介護報酬を抑制するように働かせると、介護保険全体や自治体での財源確保には効果がありそうなことがわかります。
ただ反面、介護サービスの利用が減るということは、要介護者を抱える家族の負担が増えることにも繋がってきます。

家族の負担が増えれば当然「介護離職」の可能性も高まります。
これは政府が打ち出している方針とは真逆のこととなりますね。

また介護サービスの利用が減れば、介護事業者の経営もまた苦しいものとなるのではないでしょうか。
介護報酬の引き下げによってデイサービスの閉鎖が多く起こっている事から考えて、介護事業者もギリギリで利益を出して言っているところが多い現状です。

施設が閉鎖することで困るのは介護利用者本人であり、またその家族でもあります。
これもまた介護離職への可能性を高める原因となりそうです。

超高齢化社会と介護報酬の財源という問題は一朝一夕で解決するものではありません。
ある一方向からの問題解決を試みるのではなく、包括的な視点での検討が望まれます。