ポイント

  1. 自己負担額が増えた世帯の介護サービス利用控えが起きている
  2. 施設を退去し、自宅療養しなければならないケースも
  3. 画一的な自己負担額増ではなく、段階的にするなどが望まれる

2015年の介護保険法改正において、利用者費用負担の見直しが行われました。
低所得者にはさらなる公費の投入がなされ、一定額以上の所得がある利用者は自己負担額が二割になるというものです。

高齢者の所得格差に関しては若年世代よりも大きいと言われていますが、「一定額以上の所得がある利用者」が大きな負担を強いられることにより、低所得者に比べて介護サービスの利用を控える傾向がでてきています。

果たしてこの利用者の自己負担額引き上げという法改正は妥当だったのでしょうか。

一定額以上とは

ここでいう「一定額」というのは、合計所得金額160万円以上の方を指します。
単身者であれば年金総額が280万円(月額23万円強)に達する場合、公的年金等控除が120万円引かれても160万円の所得となってしまうため、対象となります。

夫婦であれば年金総額が359万円であれば対象です。
ひとりあたりの年金月額が15万円を超せば、介護保険の自己負担額が二割となるわけです。

65歳以上の高齢者における上位20%が介護保険の二割負担に該当します。

二割負担は二倍負担

二割と聞くと、単純に「0.2」という数字が頭に浮かぶので、「あまり変わらないんじゃないか」と思うかもしれません。
しかし、実際のところは一割負担の頃に月額約9万円の費用がかかっていた要介護者であれば、単純に月額約18万円の負担となることを意味しています。
※約90万円の一割負担としての9万円だったので、二割負担は18万円。

月に23万円以上の年金を受け取っている単身者であれば、問題なく生活はしていけるでしょう。
それがもし、夫婦で世帯の年金総額が359万円だった場合。つまり一人当たりの年金額が15万円だった場合に、妻が要介護状態で特養に入居して、夫が自宅で生活をしているのであれば、夫は妻の入居費を差し引いた12万円で生活をしなければならなくなります。

月額のサービス単価が高い世帯、つまり要介護度が高い利用者を抱える世帯ほど二割負担の影響を大きく受けることになるわけです。

二割負担によって自主退去を余儀なくされるパターンも

あるご家庭では要介護度5に認知症も併発している妻を、特養での負担が倍になったことから自宅療養に切り替えたといいます。
要介護度が5かつ認知症を併発している要介護者を自宅で支援していくことは並大抵の努力ではできません。

実際に老々介護(高齢者が高齢者の介護をすること)を体験している方の中には「長年連れ添ったパートナーの介護は楽しい」と言われる方もいるようですが、介護者が心身共に疲弊してしまうことによる介護の放棄や、最悪の場合は家族であるにも関わらず殺傷してしまうという事件が後を絶たないのは周知の事実です。

すでに退職している高齢者が介護をするのならまだしも、まだ現役で仕事をしている世代である子供たちが仕事を辞めてまで自宅での介護を選択するケースもあり、政府が掲げる「介護離職ゼロ」とはかけ離れた事態となってしまっているわけです。

利用者負担増による介護保険の財源確保は重要

介護業界においては介護保険の財源枯渇が深刻な問題であり、利用者の自己負担によって介護保険が潤うことは、介護報酬のアップも考えることができるため、業界においての離職を抑えることにも繋がります。
介護報酬が増え、有能な人材がより介護業界に集まるようになれば、サービスの質の向上も期待できるかもしれません。

あくまで利用者の二割負担は高所得者に課せられるものであるため、すべての要介護者を抱える世帯が同じような状況とは限りません。
年金をもっと多く受け取っている世帯や、貯金が十分にある世帯もあります。

それらをひっくるめて「一定の所得以上は二割負担」となっているのは、中間的な所得である家庭に対してのみ、極端に負担がかかるようになってしまっているのではないでしょうか。

段階的に、利用状況などを細かく切り分けたうえで、自己負担額を設定するなどの対策が必要と言えるでしょう。